ラグビー元日本代表で、現日本ブラインドラグビー協会理事の菊谷崇さんが14日来札しました。今月25日(日)に札幌月寒ラグビー場で行われるインフォマートプレゼンツ「北海道ラグビーの日」2025招待試合早稲田大学対慶應義塾大学戦のオープニングで行われるブラインドラグビー体験会に合わせ、菊谷さんからブラインドラグビーについてお話を伺いました。           (聞き手 北海道ラグビーフットボール協会広報委員会 奥田勤)

 

【奥田】 5月25日に行います早慶戦の当日、試合前に「ブラインドラグビー」という競技の体験会を実施しますが、そもそもブラインドラグビーとはどういうスポーツなのでしょうか?

【菊谷さん】 弱視の方々がプレーするラグビーで、日本では2019年から始まった競技です。

【奥田】 ブラインドラグビーをやってみよう、応援しようと思ったのはなぜですか?

【菊谷さん】 僕たちは「One Rugby(ワンラグビー)」という団体を立ち上げて、ラグビーを通じてより多くの人を繋げ、盛り上げていこうという活動をしています。元日本代表の廣瀬俊朗さんを中心に、障害者スポーツはもちろん、健常者のラグビー、タグラグビーやタッチラグビーなど、いろいろな形のラグビーをひとつに繋げたいという思いが原点にあります。その流れの中でブラインドラグビーに出会い、自分もこの新しいラグビーに情熱を持って関わっていきたいと思い、活動の幅を広げるお手伝いができればと考えています。

【奥田】 ブラインドラグビーの魅力はどんなところにありますか?

【菊谷さん】 視覚に障害のある方がラグビーに携われるという点が、まず大きな魅力だと思います。そして、僕ら晴眼者も「弱視ゴーグル」をつけて一緒にプレーできるので、多様性という面でも非常に魅力的です。

ラグビーはもともと、ボールがどこに転がるかわからない中で、声を掛け合いながら繋いでいくスポーツ。ブラインドラグビーでは、さらにそのコミュニケーションの重要性が増し、「暗黙知」をいかに言語化できるかが問われます。この“言語化する力”は、晴眼者にとっても学びになりますし、思いやりを持ってプレーするという点で、とても意義のある経験になると思います。

【奥田】 ブラインドラグビーでは「声」が頼りになると思いますが、普通のラグビーとの違いは?

【菊谷さん】 そうですね。言葉だけじゃなく、手を叩いたり、自分の位置を伝えるための音を出したりと、表現方法が多様です。「どこにいる」「どこに投げる」といった情報を、より具体的に、かつ正確なタイミングで伝える必要があるので、声の質や量も非常に重要になります。その分、コミュニケーションの難しさもありますね。

【奥田】 ブラインドラグビーではコミュニケーションがより大切だということですね

【菊谷さん】 そうですね、はい、それはほんとにそう思います。

【奥田】 例えばパスの時はどうでしょうか?

【菊谷さん】 たとえばパスを出す時でも、言葉が非常に重要になります。

「どのくらいの距離で」「どのくらいの速さで」——「ゆっくりふんわり欲しい」のか、「敵が近くにいるから速く出して欲しい」のか。そういったことをしっかり伝え合わないといけない。だからこそ、深みのあるコミュニケーションが求められます。

【奥田】 怖さや、「すごい」と思うところはありますか?

【菊谷さん】 本当に「すごい」の一言です。実際に弱視ゴーグルをつけてプレーすると、敵がいる・いない以前に、「まずボールを取れるかどうか」が怖い。ボールを取ったとしても、どこに進めばいいか分からないし、敵がどこにいるかも見えづらい。そうした恐怖と常に向き合ってプレーしている視覚障害の方々には、尊敬の念しかありません。僕たち晴眼者も、ゴーグルを通してその一端を体感することができるのは、大きな学びになります。

【奥田】 でもやっぱり怖いですよね。

【菊谷さん】 本当に怖いです。走るだけでも怖い。ボールを仲間に投げる時も、「当たらないかな?」って不安になります。顔に当たることもありますし、接触プレーになりそうな時、視界が狭いと相手が見えないから止まれない。だから国際ルールでは、片手で横からのタッチのみが認められるなど、安全面に配慮した工夫がされています。去年11月にはイングランド遠征に行き、アイルランドを含む3カ国で、ルールの統一に向けた話し合いを行いました。海外では「ブラインド」という言葉を使わず、「インプレイヤードビジュアルスポーツ」と呼ばれていることもあります。

【奥田】 なんていう名前なんですか?

【菊谷さん】 インプレイヤードビジュアルスポーツと言います。アイルランドとかは既に弱視のスポーツが24団体があって、弱視協会みたいなのもあるんですよ。 で、やっぱりイングランドはイングランドで、そういう手厚い保証とかサポートが手厚かったりするんです。

日本ではブラインドラグビーも団体として、うまく繋がり得てない。まだパラ競技にも入れてないですし、そういうところにこう、もうちょっと活動し続けることとアピールすることで、なんかそういういろいろなハンデキャップの人たちがより表に出て活動できるきっかけにもなるし、特に健常者も晴眼者もできるんで。そういう意味ではすごく多様性が広がるスポーツだと思います。

【奥田】 ラグビーって見えてても危ないですよね。見えてても怖いなと思うんですが、ブラインドラグビーならもっと怖いですよね?

【菊谷さん】 ブラインドラグビーも、競技者は必死なんです。もうなかなかの激しいスポーツなんですよ、これでコンタクトまで発生しちまう可能性もあるんで、僕らは見えないという認識が普段無いので見ずらくなるゴーグルとか、そんなんしちゃったら余計怖くて。弱視の方々は普段の生活からこういう風な形で動いてるんでっていうのは強いですよね。うん。一緒にやると絶対勝てないです。

【奥田】・弱視ゴーグルを装着して!

全然無理です。動けないですね、そもそも。はい。 パスされてもボールをそもそも取れないです。ボールに鈴ついてて音が聞こえても無理です。キャッチできませんね。

【菊谷さん】 ラグビーだとノックフォアードの場合、自分が前にボール落としたら相手ボールのスクラムなんですけど、ブラインドラグビーのプレーの時はボール落としても5回攻撃なんで、その1回分が減るっていう認識です。 ボール落としてもまだプレーの権利はまだこっちがあるんで・・・・。

そんな感じでなんかよりちょっとルールも微妙に違ってて、継続性が持てたりとかっていう形にはなってます。

【奥田】 世界では今、どういう動きが?

【菊谷さん】 イングランドやアイルランドではすでに団体があり、視覚障害のスポーツも多様に整備されています。逆に、ラグビーが盛んなニュージーランドなどでは、まだ団体として活動していないケースもあるようです。今後は、世界規模でブラインドラグビーを統一する団体を立ち上げて、ワールドカップ開催などにつなげていきたいと思っています。ワールドカップとして開催するには10カ国以上の参加が必要ですし、日本で開催するためにも、国内外での連携が大切です。

【奥田】 企業からの支援状況は?

【菊谷さん】 まだまだこれからですね。車椅子ラグビーやデフラグビー、そしてブラインドラグビーなどまだまだ認知度は低いと思うので活動を継続して、いつかはみんなが同じ“桜のジャージ”を着てプレーできる、そんな未来を目指していきたいと考えてます。小さなことでもいいので、まずは続けていくことが一番大事だと思っています。

【奥田】 札幌の皆さんへメッセージをお願いします。

【菊谷さん】 弱視ゴーグルをつけてプレーするという体験は、普段なかなかできることではありません。見えづらい状況の中で楕円球をみんなで繋いでいく楽しさや、チームワークの大切さをぜひ感じていただきたいです。ブラインドラグビーがこれからもっと広まっていくためにも、まずは一度体験して、その魅力と可能性を知ってもらえたら嬉しいです。

(2025年5月14日 @札幌山の手高校)