去る9月22日(水)、23日(木祝)、25日(土)、函館支部の北斗市運動公園で開催された全道大会は、遠雷まじりのにわか雨には降られたものの、概ね快晴のうちに熱戦が繰り広げられました。

支部予選を勝ち抜いたチームが雌雄を決する闘いは、低く鋭いタックルやセンスの光るキックもあり、高校ラガーたちのひたむきな姿が観られたことも嬉しく感じましたが、さらに嬉しかったのは、伊與田前レフリー委員長から「レフリーとコーチの関係が見違えるようによくなりました。全体のレフリングの向上とチームのレフリーへの信頼があります」と笑顔で言われたことでした。

今をさる4年前、北海道ラグビー協会はラグビーワールドカップを契機とした組織改革に着手しました。その中の重要な要素が、レフリー委員会の改革でした。

背景には、委員会メンバーの固定化による組織の硬直化と委員会内の上意下達の文化によるコミュニケーション不足がありました。それらがレフリーのレベルアップする環境づくりを阻害して、レフリーはチームや選手とコミュニケーションすることなく、やたら笛を吹くだけのレフリングとなってしまっていたことがありました。

そこで、まずはレフリーと各チームのコーチが一堂に介して、ラグビーがいかに人生を教えてくれるものか、ということを学ぶ場として「レフリー寺子屋」を始めました。

A級レフリーにコーディネイトをお願いして、ジャーナリストの藤島大さんらをゲストに招いたりして、ラグビーの歴史や文化を教わりながら、バーバリアンズの定山渓グラウンドクラブハウスに泊まり込んで、夜を徹して「オフサイドは何のためにあるのか」とか「ラグビーの教える心とは何か」とか「人を育てて精神を養うとはどういうことか」など、普段は照れくさいので話題にもせず、さらっと見過ごすようなことを、あえて話題にあげて、哲学云々ということほどには構えずに、でも泥臭く、魂の底から話し合うという研修会を繰り返しました。

その寺子屋でも話題に上りましたが、Rugby Union「競技規則」第6条「レフリーの指名」の項に「レフリーは試合主催者が指名する。レフリーの指名がなければ、両チームが協議の上で、レフリーを指名する。両チームの協議がまとまらない場合は、ホームチームが指名する。」とあります。レフリーの指名はレフリー委員会が指名するのではなく試合の主催者が指名するのです。

伊與田前委員長は試合主催者である高体連と根気強く話し合い、高体連は両チームと話し合い、試合ごとのレフリーの割り付けを行ってきました。

つまり、チームが納得しないレフリーというのは、ほんとうはあり得ないのです。レフリングが納得できないところに、よい闘いはあり得ません。せっかく大会を開催しても、切磋琢磨してラグビーのレベルが上がるチャンスを逸してしまうのです。

それほどラグビーにおけるレフリングは大切で、それは、取りも直さず、レフリーが大切ということです。レフリーの人格が形成されてないところには、良いレフリングも生まれないのです。寺子屋を続けていくうちに、コーチがレフリーに話しかけるようになり、レフリーが自然に会話するようになり、レフリーの人という器が大きくなっていきました。

そして今年の函館では、コーチやプレーヤーとレフリーが、相互に、頻繁に会話できるようになっていて、笛を吹かれても、違和感もわだかまりもなく、さらにファイトあふれるプレーに励めるようになっていました。

この大きな収穫をよろこぶと共に、これからも、レベルの高いレフリーがたくさん育っていくように、寺子屋はじめ種々改革に取り組んでいける北海道ラグビー協会でありたいと想いました。

(一財)北海道ラグビーフットボール協会 会長 田尻稲雄(たじり いなお)

 

ラグビー観戦記in北斗市

北斗市運動公園にて行われた高等学校ラグビー全道大会・女子セブン北海道ブロックの試合を観戦しました。

試合が始まる前から、グラウンドに立つ選手全員から溢れる熱い想いが感じられ、胸を打たれました。今年もまた新型コロナウイルスによってプレイをする機会を奪われ、悔しい思い、つらい思い、漠然とした不安を抱えながら過ごす選手が多かったと思います。そんな中で開催されたこの大会では、今までの様々な思いや、支えてくれる周りの方々への感謝の思いが、試合のプレイに強く表れていると感じました。

また、女子選手の人数がどんどん増え、小樽潮陵高校は単独チームで公式戦初出場を果たしました!男子に劣らない強いタックルで進んでいく女子選手の姿はとてもカッコイイものでした。これから、北海道でますます女子ラグビーが普及・発展し、盛り上がっていくのがとても楽しみです。

勝ち負け関係なく、試合が終わると握手やグータッチをしてお互いを讃え合う姿や、仲間同士で抱きしめる姿をこの目で見て、ラグビーというスポーツの素晴らしさを改めて感じました。

(一財)北海道ラグビーフットボール協会書記局助手・小樽潮陵高校ラグビー部OG 中塚麻央(なかつか あさお)